寿命がのび、慢性疾患が増えた今、「病気になる前に発見・早期発見する」という考えが重要になっています。内視鏡での治療は開腹手術に比べ安全で苦痛が少ないため、ニーズは高くなっています。
内視鏡室で働く看護師はその専門的な治療をサポートする役割です。消化器内視鏡技師資格を持っていることで、収入アップ・業務の効率化が期待できます。
内視鏡室ではたらくメリットも併せて説明していきます。
この記事でわかること
- 消化器内視鏡技師資格をとるメリット・デメリット
- 内視鏡室の仕事内容
- 消化器内視鏡技師の役割
- 消化器内視鏡技師試験の受験資格
この記事を書いた人
結核・内科病棟、小児科外来、整形外科外来を経験後、現在 消化器内科クリニックで働いている
蒼野こるり です。
持っている資格は、看護師、保健師、消化器内視鏡技師資格。
このブログでは、消化器内視鏡技師資格に合格するための情報と、内視鏡室に転職したい看護師さんへのお役立ち情報を発信していきます!
ちなみに現在は働きながら、Web制作&簿記3級を勉強中。
消化器内視鏡技師とは?
日本消化器内視鏡技師会の認定資格
消化器内視鏡技師は、消化器内視鏡検査を行う医師の補助(検査時や治療時の介助など)を専門的に行う技術者( 専門職 )です。
国家資格ではなく、日本消化器内視鏡技師会の認定資格です。
内視鏡室で務める看護師のキャリアップ資格は、今のところは消化器内視鏡技師しかありません。
消化器内視鏡技師は内視鏡室で活かせる資格
内視鏡室の看護師(介助者)は、医師との連携がとても大切です。
なぜ内視鏡資格があるといいか。それは内視鏡技師が内視鏡業務のエキスパートだからです。
先生が行いたいことを把握・先読みし、スムーズに業務をこなしサポートする。
チーム医療を行う現場では、どこでも求められるスキルですよね。(手術室などは内視鏡室と感覚が近いのかな?と思います)
スムーズにサポートするには、土台となる専門的な知識が必要です。
知識があることで根拠を持って行動できるようになります。
→ 内視鏡室の看護師の仕事は?(記事内の下の目次に飛びます)
世界的に感染症も流行した背景もあり、内視鏡検査を行うときの感染対策の向上も求められているように感じます。
消化器内視鏡検査(治療)のニーズと認知度が高くなってきた
日本人の死因の1位は「がん」です。
今後は一番重要なのが「病気ならないための予防医療」、その次に「病気の早期発見、早期治療」が大事になってきます。
消化器内視鏡下手術のニーズがある理由は3つ。
- 長生きする人が増えてがんなどの慢性疾患も増えた
- 体に負担が少なく安全な方法で楽に手術ができる
- より多くの人に知られ求められるようになった
内視鏡下手術は開腹手術に比べお腹を大きく切らないため、痛みも少なく傷跡もほとんど残りません。
生活に復帰するまでの時間も短い傾向にあります。
このような消化器内視鏡技術の進歩と共に、内視鏡技師の技術も進歩しています。
患者様に安全安楽で最先端の医療、看護をするためにも、介助者である看護師は学ぶ姿勢がたいせつになってきます。
→「内視鏡市場のいまと動向」後日記事上げます
- 日本消化器内視鏡技師会の認定資格(国家資格ではない)
- 内視鏡室ではたらく時に活かせる資格
- 消化器内視鏡検査(治療)のニーズと認知度が高くなってきた
内視鏡室ではたらく看護師の仕事内容、内視鏡技師資格のメリット・デメリットについて、くわしく説明していきます。
その前に消化器内視鏡検査について復習したい人は下の項目をどうぞ。
そもそも消化器内視鏡検査とは?
消化器内視鏡検査とはどういう検査なのか、軽くまとめました。
(必要ない方は読み飛ばしてOKです)
- 略称: 胃カメラ、GIF 、 GF ( Gastrolntestinal Fiberscope )
- 口や鼻から内視鏡を挿入。
- 上部消化管(食道、胃、十二指腸)の観察を行う検査
- 消化管内部をくわしく観察、病変部を採取(組織検査)して診断
- 病変部を切除するなど処置や治療をすることも
- 略称:大腸カメラ、CF ( Colonofiberscopy または Colonofiberscope )
- 肛門から盲腸までみる大腸の検査
- 一番奥まで挿入し、引き抜きながら大腸の中にポリープ、がん、炎症などの病気がないかを直接見ながら観察する
- 小腸の病気が疑われる場合に行われる検査
- カプセル内視鏡やバルーン内視鏡
- 小腸は長いため、長いあいだ内視鏡で観察することは難しかったが、カプセル内視鏡やバルーン内視鏡の登場により、小腸すべてを観察することが可能となった
- 胆のう、胆管あるいは膵臓の病気を診断する
- 口から内視鏡を挿入し、行う特殊検査
- 対象の疾患:膵胆道腫瘍、総胆管結石、慢性及び急性膵炎に伴う仮性膵嚢胞・膵石症など
- 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)、術前診断、ドレナージ、結石除去などを行う
内視鏡室の看護師の仕事内容
大きく分けて2つ:内視鏡機器にかかわる業務的なもの、患者様へのケア
- 問診 (検査の目的、内服薬の確認、麻酔のアレルギーは無いか など)
- 内視鏡検査・処置内容の説明
- 前処置
- 準備、検査・処置の際の介助
- 内視鏡関連機器の点検・メンテナンス、器具の消毒
内視鏡室(内視鏡検査を行う室。内視鏡外来とも言われます)で看護師として働くためには、看護師以外の資格は必要ありません。
内視鏡室の業務範囲は施設によってさまざま
胃カメラや大腸カメラなど、検査自体はどこの医療機関でもほとんど違いはありません。
内視鏡室の業務をどこまでやるのか、仕事の範囲は医療機関によって変わってきます。
消化器だけでなく気管支内視鏡など、他の診療科の内視鏡検査や治療を行っているところもあります。
検査のみで、治療は行わない、など。
内視鏡的な治療は、医療機関の規模によっても変わってきます(EMR:内視鏡的粘膜切除術など)。
クリニックは人員や設備に限りがあるので、治療は病院と比べるとどうしても小規模になります。
ですが入院せず外来で大腸ポリープ切除術を日帰り手術で行うところなども増え、医療は日々進歩していってます。日本は最先端の内視鏡医療を行っているため、内視鏡室で勤務することで触れることができます。
内視鏡に詳しいスタッフがいてくれることで、日々の業務を効率的にこなすことにもつながります。
内視鏡の業務は病院によってさまざま。自分の望む働き方ができるか、就職する前に調べよう!
→具体的な「内視鏡看護師の1日」は後日詳細記事で上げます
- 内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラなど)の内容はどの医療機関でもだいたい同じ
- 内視鏡室の業務範囲はその医療機関によって変わる
内視鏡室勤務のメリット
ワークライフバランスがとれる
私が今の内視鏡外来を選んだ大きな理由は3つ。
- 消化器内視鏡資格が取れるから
- ライフワークバランスがとりやすから
- パートタイムの看護師が多い・休みが取りやすい
将来のキャリアアップも考えて職場を選ぶのは大切なこと。
外来の診察をしながら消化器内視鏡検査を行っています。医師は2人体制です。
繁忙期にもよりますが、大体定時に帰ることができています。
(時々残業しますが人間関係が良いので続けられています。)
ちなみに最初に働いていた内視鏡外来の検査件数は、一週間に
胃カメラ | 約5件 |
大腸カメラ | 約1〜2件 |
同じ内視鏡外来でも検査件数に結構差があります。
内視鏡室は他の科と比べて残業時間が少ないと聞きますが、その病院の規模や先生の方針によって業務範囲や忙しさがかなり変わります。
転職先を選ぶときは要チェックですね!
もくもく作業することが得意な人は居心地がいい
今の職場が自分に合っている理由はなんだろう?と考えたら、以下のことが思いつきました。
- 意外とカメラを黙々と洗浄するのが好き
- ルーティワークが苦にならない
- 段取りを組んで効率良く作業するのが好き
- テキパキ動くことが好き
機械操作や新しいことを覚えるのが苦手な人はやめてく人も少なくありません。
向き不向きはとても大切です。
「内視鏡室が向いてる人、向いていない人」について詳しく掘り下げました。気になる方はどうぞ!
内視鏡技師資格のメリット・デメリット
資格を取るのにデメリットがあるの?と思われる方がいるかもしれません。
人によってはデメリットに感じる可能性もないとは言えないので、資格の勉強する前に最初に知っておきましょう。
内視鏡技師資格のデメリット
- 一年ごとに会員費用がかかる(30歳未満:10000円、30歳以上:15000円)
- 5年ごとに更新する必要がある(更新手続き&更新手数料 3000円)
- 更新をしない or 技師会員費を支払わない → 資格を喪失する可能性がある
あら、お金がかかってしまうんだね…
申請書を書けば、休会(非会員あつかい)になる場合があるよ!
休会申請書を技師会ホームページから印刷し、必要書類を添えて、技師会事務局に送付する必要があります。
(後日詳細記事を上げます。)
申請書を出せば休会できるのは助かりますね。
内視鏡技師資格をとるメリット
年収アップ & 転職時に他の看護師と差がつく
また、職場によっては消化器内視鏡技師資格があることで、年収が上がることもあるようです。
消化器内視鏡技師資格があることで内視鏡に関わる専門的な知識を持っているという証明になるため、内視鏡室への転職時には資格を持っていない看護師と比べてとても有利になります。
- 2年以上勤めているという証明になる
- 内視鏡の専門的な知識がある証明になる
消化器の知識を深められる(内科・解剖・生理学など)
消化器内視鏡技師の試験資格を得るためには、一定の条件を満たして2年間勤務することが必要です。
毎日の内視鏡業務をこなしているだけでも、消化器内視鏡のことは詳しくなります。
消化器内視鏡技師資格の勉強をすることで、基本から丁寧に身につけることができます。
抗コリン作用ってなんだっけ?みたいな人におすすめですね!(今の職場入りたての頃のわたしです)
どの診療科でも内科系の知識は基本的に必要になります。
恥ずかしながら自分は、新人時代にみっちり勉強してこなくてもなんとかなっちゃう病棟にいました。
しばらく看護師をお休みしていたのでブランクもあり…
消化器内視鏡技師試験の勉強は、基礎を振り返る良い機会になりました!
私と同じようにブランク明けで知識や技術に自信がない、という人には勉強する良い機会だと思います。
さらに、内視鏡検査や治療、機械操作、外国語の用語など、新しい内容もたくさん学ぶのでスキルアップすることもできます。
看護師としての基礎がしっかりされてる方、日頃から内視鏡業務に密に関わっている方はかなり有利だと思います。
私の勤め先は、上部内視鏡、下部内視鏡、大腸のEMR(内視鏡的粘膜切除術)はやっていますが、ESD(内視鏡的粘膜下層はく離術)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)などは行っていません。
経験したことがない分野は、テキストでしっかり勉強しました。
内視鏡技師試験の対策を全然しないと落ちるので、ある程度勉強は必要ですね。
普段から内視鏡に関わっていた同僚や先輩でも、落ちた方が数人います。
→ 「消化器内視鏡技師試験の勉強範囲:内視鏡技師医学講義カリキュラム」後日記事
業務を自信を持って行える
座学の勉強と、仕事で実務としてこなしていること、両方が合わさって深い理解が得られるようになります。点と点がつながって線になる感覚でしょうか。
先生が患者様にしてた説明は、「こんな意図があったからだったのか!」とかね。
患者様への説明も根拠を持って正確にできるようになるので、ぶれなくなります。
内視鏡室の仕事を自信を持って行うために必要な、専門性を調べてみました。
気になる方は下の関連記事をお読みください。
スムーズに検査や治療をすすめられる
患者様への負担減
医師が行いたい治療や施術の知識があり、スムーズに検査や治療を進められるということは、患者様にとって負担の少ない安楽なケアを提供することにも繋がります。
内視鏡室ではたらく看護師には全員、この消化器内視鏡技師資格をとってもらいたい!という医師もいらっしゃるくらい、実は潜在的な需要がある資格です。
スタッフの負担減
知識と根拠を持って行動できるようになるため、質の高い内視鏡看護を実践できるようになります。
ということは職場の業務改善にもつながると言えるでしょう。
みんなで定時で帰りましょう・・・!
受験に必要な資格
→少し長くなるので「消化器内視鏡技師試験の受験に必要な資格」後日詳細記事を上げます
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